敬老の日に考える「高齢者と消化器疾患」𝗡𝗲𝘄✧˖°
敬老の日に考える「高齢者と消化器疾患」
9月の第3月曜日は「敬老の日」です。
おじいちゃん・おばあちゃんに「ありがとう」を伝える大切な日であり、ご家族にとっては「これからも元気で過ごしてもらいたい」と願う特別な日でもあります。近年は平均寿命だけでなく「健康寿命」をいかに延ばすかが注目されていますが、そのために欠かせないのが日々の健康管理です。
なかでも消化器系の病気は高齢者に多く、進行するまで症状が目立たないものも少なくありません。今回は、高齢者に多い消化器疾患と内視鏡検査の重要性、そしてご家族ができるサポートについてご紹介します。
高齢者に多い消化器の病気
- 便秘
高齢になると腸の動きが弱まり、水分や食物繊維の摂取量も減少しがちです。加えて運動不足や内服薬の影響も重なり、便秘が慢性化するケースが増えてきます。便秘は単なる不快症状にとどまらず、腹部膨満感や食欲低下、生活の質(QOL)低下の原因になります。また、「便秘と思っていたら大腸がんが隠れていた」というケースもあるため、軽視はできません。
- 胃潰瘍・胃がん
長年の生活習慣、ピロリ菌感染、持病の内服薬(痛み止めなど)により、胃の病気も増加します。胃潰瘍はみぞおちの痛みや不快感だけでなく出血を伴うことがあり、気づかないうちに貧血が進行することもあります。さらに本邦では依然として胃がんが多く、早期のうちは症状がほとんど出ないため、定期的なチェックが欠かせません。
- 大腸がん
大腸がんは日本で最も患者数が多いがんの一つで、特に40-50歳を超えるとリスクが高まります。初期段階では自覚症状が出にくく、便潜血検査や大腸カメラで偶然見つかることも少なくありません。ポリープの段階で発見・切除できれば、大腸がんへの進行を未然に防ぐことも可能です。
「年齢のせい」で片づけないことが大切
高齢者の体調変化を「年だから仕方ない」と思ってしまうことは少なくありません。たとえば、
- ▶ 食欲が落ちた
- ▶ 体重が減った
- ▶ 便秘や下痢を繰り返す
- ▶ 胃もたれが続く
こうした症状を「年齢のせい」と見過ごすことは危険です。
特に次のようなサインは、胃腸の病気の可能性が高いため注意が必要です。
- ▶ 便に血が混じる
- ▶ 痩せようとしていないのに体重が減る
- ▶ 健診で貧血を指摘された
- ▶ 黒っぽい便が出る
こうした場合は放置せず、専門医の診察を受けることが早期発見・早期治療につながります。
内視鏡検査の役割
特に高齢の方は以前に受けた内視鏡検査で「胃カメラや大腸カメラはつらい」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし近年は内視鏡機器が進歩し、以前よりはるかに楽に受けられるようになっています。
胃カメラのメリット
- ▶ 胃潰瘍や胃がんを直接観察できる
- ▶ 必要に応じてその場で組織を採取できる
- ▶ ピロリ菌感染の影響がチェックできる
- ▶ 食道、十二指腸も観察できる(高齢者にみられる逆流性食道炎などのチェックも可能)
大腸カメラのメリット
- ▶ 大腸がんや腸の炎症の診断が可能
- ▶ ポリープを発見した場合は、その場で切除可能
- ▶ 将来的ながん予防につながる
検査を受けることは「病気を見つけること」だけでなく、「病気を防ぐこと」にも直結しています。
ご家族ができるサポート
高齢の方は「検査は大変だから」「もう年だから」と受診をためらうことが少なくありません。そのため、ご家族の声かけやサポートが非常に重要です。
- ▶ 「最近、食欲はどう?」
- ▶ 「お通じは順調?」
- ▶ 「健診は受けた?」
といった会話を通じて、気になる症状がないかを確認してみてください。検査に付き添ってあげるだけでも、ご本人の安心感につながります。
敬老の日は「長寿を祝う日」であると同時に、「これからも健康でいてほしい」と願う日でもあります。この機会にご家族で健康について話し合ってみるのも良いでしょう。
院長からの一言
「敬老の日は、ご家族が健康について話し合う大切なきっかけになると思います。高齢の方に多い消化器疾患は、早期発見できれば十分に治療可能なものが多いです。当院では、苦痛の少ない検査と丁寧な説明を心がけています。内視鏡をやったほうが良いのかどうか?体力的に内視鏡が出来ますか?などというご質問も多くいただきます。どうぞお気軽にご相談ください。」
まとめ
敬老の日をきっかけに、高齢者に多い消化器疾患について改めて考えてみませんか?
便秘、胃潰瘍、大腸がんなどは年齢とともにリスクが高まりますが、早期発見・早期治療で予後は大きく変わります。
「最近ちょっと気になる症状がある」「健診で異常を指摘された」という方は、この機会にぜひ一度ご相談ください。